名車と呼ばれる類は多いが、このクルマほど唯一無二の存在感を放ち続ける一台はない。1959年製のキャデラック・エルドラド。製造から半世紀以上経った現在でも、「59キャデ」はフィフティーズのアイコンとして抜群の知名度を誇る。
戦勝国アメリカの華やかな時代を投影したロケットのような大型テールフィン。8つ目にも見える4灯ヘッドライト。そして、全長5.7メートル超え、全幅2メートル以上という巨大なボディを軽々と加速させる390ci(6380cc)のV8エンジン。見た目だけではない。1959年という時代に、パワステやエアサス、電動パワーシート、電動ドアロックといった装備を取り入れている。アメリカという国の強さを無言のうちに物語る、いや認めざるを得ないクルマである。
「日本の道路事情に合わないクルマ」「ガソリンを垂れ流すクルマ」などという声も聞こえてくるが、そんな夢のない男にこのクルマは似合うはずがない。そして若造にも似合うクルマではない。個人的に言わせて頂けば、59キャデが似合うのは59歳以上。なぜなら2018年の今年、このキャデと同じ1959年生まれの方は偶然にも59歳を迎える。
1959年に生まれた人が59歳で59キャデに乗る。そんな偶然のストーリーも当たり前のように聞こえる夢に満ちた一台だ。
1950年代を代表するアメリカの高級ヴィンテージカーであり、このクルマだけに特化した愛好家も多数存在するため、入手することは簡単ではない。可能性は限りなくゼロに近いかも知れない。それでも「いつかは59キャデ」と夢を持ち続けてしまう。まさに希代のドリームマシンである。