穿きやすさを追求したジーンズを作るブランドは数多く存在するが、あえて穿きにくいジーンズを作るブランドがあることをご存じだろうか。そのブランドは「EIGHT-G」(エイトジー)。日本最古のジーパンブランドとして、デニム業界の歴史にその名を刻む、老舗ブランドである。
そのエイトジーが作り上げたジーンズが「2キロジーンズ」。その名の通り2キロ越えの超ヘビー級ジーンズ。一般的なジーンズの生地の厚さが13〜14オンスであるのに対し、2キロジーンズは約2倍の28オンス。織機で織り上げられる限界の厚さである。
なぜ「穿きにくいジーンズ」なのか。エイトジーは、その長い歴史の中で数々のジーンズを手掛けてきた。現在でも、ジーンズブランドとしては驚異的な幅広いモデルラインナップを誇る。そのエイトジーが新しい挑戦として掲げたのが、常識を覆す、誰もが見たことのない「穿きにくいジーンズ」を作り上げることだったのだ。
28オンス、重量2キロ越えのジーンズの製作は困難を極めた。ジーンズを織る織機にも限界があり、例え生地が完成しても、それを縫製する専用のミシンを用意しなければいけない。さらに、百戦錬磨の縫製職人もここまで分厚い生地を縫ったことはない。生地が幾重にも重なる部分は木槌で叩き付けながら縫い上げるが、強靱な針は簡単に折れてしまう。まさに職人と28オンスデニムの真剣勝負だった。
挑戦と失敗を幾度となく繰り返し、ようやく姿を現した2キロジーンズは、予想をはるかに上回る穿きにくさとなった。「これ人間が穿くものなのか?」とさえ思ってしまう、未知なるジーンズ。生地が分厚いため、フロントのボタンを留めるための「2キロフック」なる専用ツールまでリリースされたほどだ。
分厚さと硬さ、その穿きにくさの極みとも言える2キロジーンズだが、驚くことに発表するや全国のデニム愛好家からの注文が殺到。生産数が限られる2キロジーンズは、瞬く間にプレミアムなモデルとなった。
穿くことを挫折する人も多いと聞くが、その困難を乗り越えた先にあるド迫力の色落ち。デニムを愛して止まない男たちは、この色落ちを手に入れるため、前代未聞の超ヘビージーンズに挑み続けるのだ。(出典:ジーパンセンターサカイ)