個人的に腕時計はブレス派だ。しかし、40歳を超えた頃から無性に革ベルトも気になり始めた。革ベルトの腕時計に、どことなく大人の余裕を感じるようになったのだ。それでもまだ革ベルトの腕時計を所有していない。理由は簡単、物欲を満たしてくれる革ベルトに出会えていないからだ。
そんな時に見付けた1本の時計ベルト。素材は兵庫県姫路市にある世界屈指の馬革タンナーである新喜皮革の極上コードバン。コードバンとは、馬の臀部(尻部)の表面を削った内部の層のことを指す。大きな馬一頭から僅かしか採れない部位で、希少性の高さから「革のダイヤモンド」と証されている高級素材だ。
一般的な革は表面の銀面を含んでいるため、頻繁に曲がる箇所にはシワが現れる。対してコードバンは革内部の層のため、折り曲げてもシワが付くことはほとんどない。そのため、高級革靴やランドセルなど、耐久性を求められるプロダクトに採用されることが多い。つまり、シワが付かず、いつまでもビシッとした佇まいを見せるコードバンは、時計ベルトに最適な素材と言えるのだ。
腕に触れる裏面にはタンニン鞣しの国産牛革サドルレザーを採用。とにかくタフな革素材で、馬の鞍やバイクのサドルに多用され、使い込む程に飴色へとエイジングするプロセスは多くのレザー愛好家を魅了し続けている。
製作工程にも並々ならぬこだわりがある。通常であれば1種類で済む接着剤も、革の特性を見極め3種類を使い分ける。革の個体差による硬さの違いに合わせ、縫製前にハリの調整を行い完成度を高める。見た目の印象と耐久性に大きく影響する縫製は、あえて手縫いではなくコードバンの美しさを際立たせるミシン縫いを採用。何度も試行錯誤を重ね、時計ベルトに適した針、糸、縫い幅を導き出した。
この極上の時計ベルトを仕立てるのは革職人、宮崎泰二。唯一無二の存在を目指し、すべての工程を自ら手掛けるブランド「無二」を立ち上げた生粋の職人だ。彼の手から作り出されるコードバンを使ったプロダクトは、今後もこのサイトに度々登場することになるだろう。(出典:Mens Leather Store)